超高齢社会の歯科医院のありかた 「オ...
2018.05.20
本日、大手歯科器材メーカーGCの学術講演会 「オーラルフレイル」歯科医院が取り組む予防と対策 に出席してまいりました。
〈内容〉
●オーラルフレイルから在宅診療に至る“かかりつけ歯科医”への期待
植田耕一郎先生
日本大学歯学部 摂食機能療法学講座教授
摂食機能評価法における診療室で実施可能な評価として
オーラルディアドコキネシス
反復唾液えん下テスト
ブローイング
を行う。
摂食嚥下訓練の必要性についてとその方法
●超高齢社会にかかりつけ歯科医が求められること、できること
須貝昭弘先生
神奈川県川崎市 医療法人社団歯愛会 須貝歯科医院院長
超高齢社会の歯科的問題について
外来においては咀嚼・咬合・顎運動だけを見ていたものが、寝たきり高齢者や認知症患者においては、咀嚼やえん下状態まで見なければならないこと。
診療室で役立つ摂食嚥下の知識について
寝たきりによる唾液量の低下と根面う蝕について
今後の超高齢社会のなかでかかりつけ歯科医としては患者の口から食べることを最期まで支援することが求められている。
●歯科衛生士が気付き対応する高齢患者の口腔機能低下
山口朱見先生
千葉県松戸市 医療法人社団千葉健愛会あおぞら診療所 歯科衛生士
超高齢社会となり、現在では1人の65歳以上の高齢者を20歳~64歳の成人が2.6人で支えている社会構造が、2060年には高齢者1人を1.2人で支える社会構造になると想定されており、高齢者ができるだけ自立してしかも健康で過ごしてもらう事が必要となる。
特に口腔機能は栄養状態から全身状態へ大きく影響してくため、高齢患者では全身疾患を持つ場合が多く身体のみならず口腔機能が低下していることが多い。
また、全身疾患がなくても活動量の減少により本人の自覚なしに全身や口腔の機能低下の進行が見られることがある。
歯科衛生士として歯科医院に来院している患者さんや訪問先の患者さんの口腔機能低下に気付き、口腔清掃はもとより摂食嚥下機能向上を行うことは全身状態の維持と向上へとつながるものがある。
1.口腔周囲の筋肉の動き・筋肉の左右差硬さ及び筋肉量をみる
両側での咀嚼を意識させる。口腔周囲のマッサージを行う。
2.口腔の乾燥状態を見る
水分の補給を十分に行う。舌運動や唾液マッサージを行う。
対症療法として保湿剤・人口唾液を使用する。
3.舌の観察
舌の動きをみる。舌の力が弱い。舌が薄いなどは舌の筋力低下とみられる。
舌運動として舌を左右前方に動かしたり、舌で頬を押す、口蓋に押し付ける、またタ・カ・ラなどを発音させる。
4.うがいの様子の観察
嚥下機能の低下した患者ではうがいでむせることがあり、対処法として口腔周囲の運動と共に首・肩・腕の運動を提案する。
5.食事の内容を聞き取りし、必要に応じて失歳の咀嚼力を確認する。
食品の大きさや硬さの確認、きちんと咀嚼してえん下できているかの確認、むせる場合は摂食嚥下時の歯性の調整、口腔周囲や頸部の運動を提案する。
6.会話の様子を観察し、よく聴く
声のかすれ、痰が絡んでいないか、声が小さい、呼吸の乱れがないか、発音が聞き取りにくくないかを観察する。
対処法として口腔周囲の運動と首・肩・腕の運動、深呼吸、ブローイング、発生などの提案。
7.何か変と思うことに注意する。
口腔清掃状態が急に悪くなった、う蝕や歯周病が急に進行した。
また口腔のみならず服装・髪型・歩きかたなど容姿の変化の観察も重要となる。
●認知症の人の口を支える基礎知識
平野浩彦先生
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター病院 歯科口腔外科部長
①認知症の現状と施策について
②歯科医師が知るべき認知症の特徴
アルツハイマー型認知症の脳内での変化
認知症の定義について
加齢に伴うもの忘れと認知症の物忘れの違いについて
認知症患者の行動を理論的に理解する
認知症の周辺症状 問題行動と迷惑行動についてと周辺症状の向き合い方について
③認知症の人への対応
歯科医療機関で起こるBPSDに対する対応について
顔や姿を見せてから声をかける
無言で作業しない
知り合いアピール(世間話をする)
見守る、声をかける
言葉と視覚情報でわかりやすくする
混乱の渦に陥れない
歯科治療の不安に対応した環境整備がひつようとなる
環境への不安の取り除きとして
できるだけ本人の様子を観察しやすいユニットに通す。
治療内容や治療耳時間の終了の見通しを伝え、安心感を与える。
なるべく家族に同席してもらうように協力を得る。
治療行為の不安の取り除きとしては
口腔、顎顔面、頭頸部への急な接触を行わない。
口腔の過敏、水分や音の出る機械による恐怖感に配慮する。
信頼関係を保ち、理解を促してからの介入により安心感を与える。
顔を見せて話しをし、見えないところから話しかけない。
治療内容の理解を助ける説明が必要
認知症の人の理解のため、同じ説明方法を繰り返し用いるようにする。
認知症の人の理解力に合わせた説明方法を探る。
治療内容について、図や模型をまじえた説明用紙などを利用する。
説明後、忘れていても根気よく同じメッセージを繰り返す。
治療中の観察とストレスの軽減を図る対応
認知症人は訴えが少なく、あるいは多様であることから、何が起こっているのかを観察から判断する必要がある。
そして、歯科医療機関のスタッフの適切な声かけにより、認知症の人の不安やストレスを軽減させることができる。
呼吸、血圧、むせなど身体的な観察を行う。
拒否的な発言や行動などの声かけを行った時の反応。
表情が険しくなるなど経時的な表情や訴えの変化の観察。
落ち着きのなさや興奮などの観察。
歯科外来でフォローする時の視点
心理面の配慮として
認知症の症状は基本的に理解可能として接するように心がける。
本人は強い不安の中にいることを理解して接するようにする。
感情面は保たれているという認識で接する事。
より身近な人に対して、認知症の症状がより強く出ることが多くなるという認識で接することを心がける。
安心感を与えるため介護者に同伴してもらう。
また、家族の介護負担に常に配慮してあげる。
変化への対応
口腔機能の低下などの変化の観察
日常の口腔清掃行為の変化の観察
行動、心理症状(BPSD)、精神科薬剤などの変更や追加処方の状況、発熱、疼痛、基礎疾患の悪化などの身体疾患の変化、コリンエステラーゼ阻害薬などの副作用についてなど問診による2~3か月の状況変化を注意する事。
超高齢社会を向かえ今後ますます外来には,認知症を含む要介護の患者さんは増加します。
将来の状況を見越して、高齢者専用歯科ユニットを設置しましたが
現在のところ当クリニックでは、要介護の患者さんは1日に数人なのでこのユニット1台で対処はできていますが、将来は要介護の患者さんは半数近くになると思われるので、ユニット台数を増加する必要性もあると思います。
またハード面だけではなくサービス面においては、歯科医師である私と清沢歯科クリニックのスタッフたちも今後高齢になっていくため、患者さんに対しての老老介護という形態にならざるを得ません。
超高齢社会の課題はたくさんあります。