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自分が2本の歯を喪失してしまった経緯...

2016.03.20

自分が2本の歯を喪失してしまった経緯と反省

この度、私自身の歯の左下奥歯2本を喪失してしまいました。
歯科医師である私は、自分の欠損補綴の方法は入れ歯ではなく、迷わずインプラント補綴を選択しました。
入れ歯よりインプラントの方が、残っている歯が断然長持ちするのが一番の理由です。
その他インプラントの方が入れ歯に比べ数多くの利点があるのもその理由です。
インプラント手術は、ストローマンインストラクターの高橋恭久先生に埋入していただきました。
埋入していただいたインプラント体は、ストローマン社製インプラントのテーパードエフェクトSLActive 2本です。

今回、奥歯2本(左下6番・7番)を失ったことは歯科医師として医者の不養生と言いますか...お恥ずかしい限りです。
2本の歯を喪失してしまった経緯ですが、
まず、高校時代に一番奥の歯(左下7番)が虫歯になり放置してしまったため通学途中の歯科医院へ治療に行きました。
かなりご年配の先生でしたので、現在のような抜髄根充という方法ではなく、おそらく亜砒酸で神経を殺してかぶせたと思います。
数年後その歯が膿んできてしまったので、大学の先輩の歯科医院で感染根管治療をしてもらい、かぶせなおしました。
すでに歯の根に2次虫歯があったため、それを除去したので歯が薄くペラペラになってしまいました。
そして10年前、再度膿んできたため、かぶせ物を外してみたところ、案の定歯根が破折していたので、やむなく抜歯をしました。
インプラントの埋入も考えましたが、その時私は左側舌に悪性腫瘍ができたため、舌の1/5を切除しておりました。
そのため左側ではあまり味覚がないため、右側のみで咀嚼していたので左側の咀嚼には不便を感じておりませんでしたので、喪失した歯の対合の歯が挺出(延びてくる)するようだったらインプラント埋入を検討しようと思い放置しておりました。
ところが、昨年の2月その手前の6番に違和感を覚え、排膿がありました。
その歯も失活歯でしたが根充は良好なのに排膿があるという事は、もしやまた歯根の破折か?
レントゲンを撮影してもはっきり破折線は見えず。
しかし、10年前の歯根の破折と同じ痛み。
それは自発痛はなく、強く噛みしめた時だけ起こる鈍い咬合痛と排膿
迷わず、冠を撤去したところビンゴでした。
またもや歯根破折でした。
やはり歯は1本でも喪失したら補綴すべきとつくづく思い知らされました。
すぐに抜歯する決意をしました。
なぜなら、もたもたしていると折れた歯の周囲の骨がどんどん吸収して骨の幅がなくなり、GBRなどの骨造成をしないとインプラントが埋入できなくなる可能性があるからです。

さっそく近所の先生に頼んで抜歯をしてもらいに行きました。
抜歯後、骨を速く再生させるために自院の遠心分離器を先生の所に持ち込んで、採血してCGFを抜歯窩に充填してもらいました。
CGFとは、主に骨の再生を促進させるための自己血から抽出した再生療法です。
抜歯窩に何もしないのとCGFを充填した場合の違いも今回経験できました。
歯の状態にもかなり左右されると思いますが、CGFを抜歯窩に充填すると抜歯窩が気になりません。
どういうことかと言うと抜歯窩が歯肉の一部のような感じです。
そして、少ししょっぱさが数日間ありました。
一部の報告では、抜歯窩にCGFを充填すると疼痛が緩和されるとのことでしたが、私はそれまで信じていませんでした。
ところが私のケースでは本当に疼痛はありませんでした。
しかも、今回の私の6番の抜歯では、がっちりとした根が2根あったので、いわゆる難抜歯(なかなか抜けない抜歯)でした。
根を分割しても抜けないため、周囲の骨を削合してやっと抜けました。
それだけのことをして抜歯したにもかかわらず、CGFのためか疼痛が発現せず、痛み止めを1錠も飲まずに済みました。

インプラントの埋入においては、抜歯即時埋入もありますが、通常抜歯後6か月で埋入可能とされております。
私自身の考えとしては特に急ぐケースでなければ、しっかりとした皮質骨が再生されてから行ったほうがより確実に安定性の高いオッセオインテグレーションが獲得できると思っておりますので、抜歯後1年後に埋入を行いました。
前のブログの通り、インプラント埋入術後疼痛はほとんどなく、痛み止めを1回服用しただけでした。

今回の件で私は、
①若いころのむし歯から始まり ②放置したために歯の神経を取り ③感染根管治療を行い ④2次虫歯になり ⑤歯根破折で抜歯 ⑥抜歯後放置のためさらに残存歯の破折で欠損歯の拡大 ➆抜歯窩に再生療法 ⑧インプラント埋入手術
といった2本の歯の喪失する歴史を患者の立場で貴重な体験をしました。
日常から患者さんには、きちんと治療をするように勧めているのに情けないことと実感しております。

やはり、歯の治療にかかわらず病気は早期発見・早期治療が原則ですね。
そして、歯を1本でも喪失したら補綴をしなければ、やはり欠損歯は拡大していくものだとつくづく思い知らされました。