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日本磁気歯科学会出席

2023.11.12

日本磁気歯科学会出席

本日、東京医科歯科大学にて日本磁気歯科学会に参加して参りました。

磁気歯科とは、わかりやすくご説明すると
磁石で維持する入れ歯のことです。
天然歯を利用した磁石で維持する部分入れ歯や
インプラントを埋入して磁石で維持する総入れ歯、そして最近では部分入れ歯にも応用しています。
当クリニックでは、日本で磁性アタッチメントが販売された1992年から部分入れ歯に即導入し、多くの症例数を行っております。
当時の磁石構造体はかなり大きいものでしたが、当時見たときはこんなに小さいのにすごい磁力だと思ったのを記憶しております。
現在では、当時の大きさの半分以下でそれ以上の磁力を発揮するまで進歩しました。
磁性義歯の利点は
従来の義歯のように金属のバネがなく審美性に優れていること
義歯の着脱が非常に楽なこと
おさえられている歯に負担がかからないため、残存歯の寿命がバネ付きの入れ歯に比べ大幅に長くなること
等です。
インプラントに応用した場合も同様に、インプラント体の寿命が大幅に長くなります。

〈講演内容〉
「IOD(Implant Over Denture)における磁性アタッチメントの活用法」
田中讓治先生
日本インプラント臨床研究会施設長

超高齢化社会における無歯顎・多数歯欠損の有床義歯治療のアプローチとしてのインプラント治療について
その中でも比較的安価で外科的侵襲が軽減できるインプラント・オーバー・デンチャーの利点と維持装置であるバーアタッチメント・ボールアタッチメント・ロケーターアタッチメントそして磁性アタッチメントについての考察
特に磁性アタッチメントは、支台の保護・義歯のバリアフリー・審美補綴の3つの利点があり、健常者は勿論障害者でも義歯の着脱が容易であること
特に片麻痺であってもクラスプ義歯よりもはるかに着脱が容易で、介護者においても容易に着脱と清掃が可能が事があげられる。
また、磁性アタッチメントは他のアタッチメントに比べて、摩耗などによる交換も行わなくて良いため通院が最小限にできること
また、術者側としてはインプラント埋入方向に平行性がとれないケースでも、アタッチメントが取り付けられる利点がある。

「磁性アタッチメント再考・臨床にどう活かすのか」
大久保力廣先生
鶴見大学歯学部学部長

磁性アタッチメントの支台装置としての有用性について
① 長期に持続する恒常的吸引力を有すること
② 有害な力を支台歯に伝達しないこと
③ 適応範囲が広いこと
④ 定位置に戻る復元力がある
⑤ 小スペースでも使用可能
⑥ 吸引力のばらつきがない
⑦ 唾液が介在しても吸引力は変わらない
⑧ 使用数に比例した維持力が獲得できる
⑨ 意外性の少ない維持力の発現機構を有する

「歯根・インプラントに利用する際に気をつけたいポイント」
前田芳信先生
大阪大学大学院歯学研究科 名誉教授

磁性アタッチメント義歯の最も重要な3項目
① セット時に磁石構造体とキーパーとの間隙をゼロにする
② キーパー面は義歯の着脱方向に対してできるだけ垂直にする
③ 義歯の安定を考えて、キーパーと磁石構造体との位置ズレを最小にする
それに加えて
支台の数と歯列弓での位置により義歯床の回転と沈下を考慮すること
また、磁性アタッチメントにより安定する支台付近に来能力が集中するため
義歯床に効果的な補強の必要性
このとき注意することは、義歯の磁石構造体の周囲に補強線を付与しても必ず咬合圧によりレジンの底抜けの発現の可能性があるため
補強のメタルは必ず磁石構造体の上部に設置すること
① 磁石構造体とキーパーとの間隙をゼロにすることは
マグネットをレジンでセットする際の術者の問題であるが
マグネットセット時のレジンの重合収縮において、キーパーと磁石構造体が引っ張られることにより間隙が出来るので、少なくともレジンが完全硬化するまで義歯を外さないことが重要であること

「インプランオーバーデンチャーにおける磁性アタッチメント」
金澤学先生
東京医科歯科大学口腔デジタルプロセス学分野教授

インプラントオーバーデンチャーのアタッチメントであるバーアタッチメント・ボールアタッチメント・ロケーターアタッチメント・磁性アタッチメントの海外での研究・論文・患者満足度の比較について
また、有歯顎のIARPD(Implant Assisted Removable Partial Denture)の臨床研究結果において、従来の部分床義歯とインプラントを利用した場合との有用性について

「有床義歯の維持・把持」
亀田行雄先生
有床義歯学会JPDA会長

有床義歯の重要な三大要素である維持・支持・把持について今回は、IODとIARPDに付いての考察
遊離端におけるIARPDのインプラントの埋入位置による、残存歯への影響
アタッチメントの高さの違いによるデンチャーの側方力が残存歯に及ぼす影響の比較
部分床義歯において最も重要なのは支持であり続いて把持そして維持であること

先ほど掲載したようにマグフィットが販売された1992年当時は天然歯にのみしか適応範囲はなく部分入れ歯のみでした。
インプラントもITI(現ストローマン)が一般の歯科に普及し始めたばかりで、インプラントに磁性体を装着して大丈夫なのかと議論されていた時代で、明確なエビデンスがないためインプラントにマグネットは禁忌とされてきました。
その後、インプラント体と磁石構造体に及ぼす影響について研究され偽害性もないことから日本では愛知製鋼を主として急速にインプラントへのマグネットの応用が進みました。
海外では、吸着力が弱いため患者満足度の悪さで術者の人気はあまり良くないようです。
日本製のマグフィットを使ってもらえば良いと思いますが、日本製と比べ海外製のマグネットの質が悪いのが理由の一つと思われます。

当クリニックでは、下顎のIOD(インプラントオーバーデンチャー)には骨密度の良さからしっかり維持できるロケーターアタッチメント又は最近ではTUMシステムによる総義歯にしています。
上顎は骨密度が低いため、インプラント寿命を延ばすために磁性アタッチメントを用いております。
磁性アタッチメントは他のものに比べて維持力は弱くなりますが、当クリニックでは患者さんの満足度は非常に高く、現在のところ上顎の磁性アタッチメントによるインプラント脱落は約20年で2本のみで全体の1%程度です。
今後はこれをゼロになるよう務めます。