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日本口腔インプラント学会学術大会2日...

2018.09.16

第48回日本口腔インプラント学会学術大会2日目 本日も大阪国際会議場にて出席して参りました。

9月16日(日)の講演内容
〈傾斜埋入を伴う少数インプラントによる全顎的即時荷重治療〉
下尾嘉昭先生
ユニバーサルインプラント研究所

全顎欠損症例においては、上顎では6~8本、下顎では6本のインプラント体が必要とされていますが、MALO CLINICでは、後方2本を傾斜させ4本のインプラント体のみで全顎的に即時荷重を行うことを開発しました。
いわゆるALL-on-4です。
この方法は、多くの症例において良好な結果をこのクリニックで得ているようですが、様々な反対意見もあることは事実です。
ただ単に4本のインプラント体を使用して後方2本を傾斜埋入させれば、どのインプラントシステムでも良好な結果得られるとは限りません。
成功するには、術前の診査・診断から外科術式と補綴装置の製作方法、メインテナンスと全ての工程を的確に行うことが重要です。
この方法のプロトコールを解説し、ディスカッションを行った講演でした。

〈20年間の歯顎即時荷重インプラント経験から得た無歯顎のガイドライン〉
堀内克啓先生
岩手医科大学歯学部補綴インプラント科

無歯顎患者のインプラント治療においては、遅延荷重を行った場合には治療中の暫間補綴に苦慮します。
治療期間中の可撤性義歯による粘膜を介しての負荷によるディスインテグレーションや治療期間の長期化の問題があり、その解決策として即時荷重が下顎ではオトガイ孔間で行われるようになりました。
またその後、ALL-on-4による即時荷重が行われるようになりましたが、そのような症例にどの治療計画が適しているのかのガイドラインはなく、失敗に終わるケースも少なくないようです。
講演は即時荷重の成功のポイントと失敗例から得た教訓を基にしたインプラント即時荷重への警鐘と予知性の高い治療法についての考察でした。

〈全顎的即時荷重インプラント補綴は無歯顎症例に対する標準治療といえるのか?〉
細川隆司先生
九州歯科大学付属病院口腔インプラント科

無歯顎症例においては、少数の4本から6本のインプラントをできるだけ骨造成や骨移植をせずに傾斜埋入などと組み合わせて埋入して、プロビジョナルのボーンアンカードブリッジを装着して即時荷重をかける治療方式であるALL-on4が提唱される一方で、より本数を多く埋入で上部構造を製作する方法や骨造成をして傾斜埋入を避ける方法、即時荷重はリスクがあるため2回法での通常荷重を推奨する考え方も根強く残っております。
従って無歯顎の患者におけるボーンアンカードブリッジの治療法については、明確な標準治療は確立されておりません。
本講演では九州大学付属病院口腔インプラント科における、無歯顎患者の少数のインプラント体を骨移植なしに埋入し、即時荷重をかける治療方式である全顎的即時荷重インプラント補綴(ALL-on4)の適用が標準治療として位置づけできるのかの議論でした。

〈口腔内スキャナーで変わる歯科治療〉
上村江美先生
昭和大学歯学部歯科補綴学講座

デジタルデンティストリーが進化し、特に口腔内スキャナーの進歩はめざましくなっています。
口腔内スキャナーによる光学印象はシリコーン印象剤を用いた材料を介在した3次元的形態の転写の必要がないため、従来の印象剤を使用した方法と比較して制度や再現性に優れているメリットがあります。
インプラント治療においても口腔内スキャナーやコンビームCT撮影によって得られるデジタル化された3次元形態データはCADソフトで統合されてインプラント埋入シュミレーションやサージカルガイドの製作そして上部構造のデザインなどに活用されています。
従来のワークフローでは必須であった印象採得や石膏模型製作は不要となって、プランニングと上部構造の製作が可能となりました。
講演では口腔内スキャナーについての基礎的なデータと口腔内スキャナーを活用した臨床におけるデジタルワークフローと今後のインプラントにおける展開についての講演でした。

〈Intra-oral Scannerを用いたデジタル歯科治療の可能性〉
上松厚夫先生
総合インプラント研究センター

Intra-oral ScannerやコンビームCTなどから3次元で得られたデータをソフトを介して
バーチャル診断用ワックスアップでデザインを行って、STLファイル形式で送信されたデータからプロビジョナルレストレーションを3Dプリンターやミリングマシンを用いて製作するCAD/CAMシステムを用いて、補綴治療が行えるようになりました。
以前はシリコン印象材を使用して石膏模型を卓上スキャナーでスキャニングして補綴物をデザインする過程では、精度が高いとされていたシリコン印象材を使用しても印象材の変形や石膏模型の硬化膨張と石膏模型のスキャニングの3段階で変形を起こして精度が落ちてしまうことがありました。
それに比べて光学印象においては、これらの過程がないため口腔内の歯牙および軟組織と咬合関係のデータを高精度で採得することができます。
また、口腔内のマーカーを基準としてコンビームCT撮影と統合させることによって軟組織上で診査診断していた補綴学的な基準を硬組織上へ応用することによって、CAD/CAMシステムを用いて診査基準を具現化することが可能となりました。
インプラント治療ではすでにサージカルガイドを使用して、より安全なインプラント外科治療が可能となりましたが、今後はインプラントに限らず他の歯科治療にもデジタル化を応用していくかの講演でした。

〈口腔内スキャナーの現在と未来の応用〉
北原信也先生
日本大学歯学部客員教授 昭和大学歯学部客員教授

今やAI(人工知能)や自動車においては自動運転などデジタル化が進歩する中、歯科治療においてもデジタルデンティストリーは広がりを見せております。
技工サイドでは補綴治療にCAD/CAMシステムが導入されデジタル化が進んでいますが、まだまだ現在の歯科治療はアナログが主流であり、ようやくシリコン印象を使用しない光学印象による精度の高い治療が可能となりつつあります。
しかし、口腔内スキャナーの限界や完全に印象材をなくす治療には、まだまだ改良が必要とされております。
講演では、口腔内スキャナーの使用による現状の問題点から将来にわたる展望を含めたデジタルデンティストリーについての考察でした。

〈エビデンスに基づいた口腔内スキャナーのインプラント治療への臨床応用〉
深沢翔太先生
岩手医科大学歯学部補綴インプラント学講座

口腔内スキャナーの臨床応用により、一般補綴や口腔インプラント治療において適用が多くなってきました。
口腔内スキャナーは、印象材と石膏模型が不要になることから、治療時間の短縮はもとより患者の肉体的負担を軽減し材料費の節約にもなり、高い精度の補綴治療を可能としました。
現在、インプラント治療の上部構造製作においては、従来のシリコン印象材を使用した方法が一般的です。
この方法は、臼歯部の症例においては印象用のコーピングの着脱とドライバーの操作が、患者が大きく開口しなければならない苦痛と術者においてもインプラントドライバー操作や印象用部品の口腔内落下などの注意を要するストレスがあります。
口腔内スキャナーを使用すればこのようなストレスはなくなりますが、口腔インプラント治療におけるスキャナーの適用は、まだ一部の単独歯欠損症例に限られております。
多数歯欠損症例での臨床報告もありますが、精度の不安からベリフィケーションインデックスを採得する必要があるなど、まだ確立はされていません。
講演は、口腔内スキャナーの精度に関する研究と口腔インプラント治療における臨床応用可能欠損の大きさについての考察でした。