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日本口腔インプラント学会学術大会1日...

2018.09.15

第48回日本口腔インプラント学会学術大会 大阪国際会議場に2日間出席して参りました。
9月14日(金)は午前中のみの診療と15日(土)は休診させていただき大変ご迷惑をおかけしました。
大阪は初めての滞在でした。
14日(金)の夕方に大阪に到着し道頓堀を散策しました。

9月15日(土)の講演内容
〈インプラント治療後の変化の現状〉
椎貝達夫先生
東京歯科大学口腔インプラント学講座

かつては、ブレードタイプのインプラントから普及し、その後オッセオインテグレーションタイプのインプラント治療が臨床応用されて35年が経過しました。
ブレードタイプのインプラント体は、インプラント体の沈下や天然歯と連結することによる、天然歯根の破折など数多くの問題があり衰退しました。
それに比べて成績のよいオッセオインテグレーションタイプのインプラント体が主流となり、現在では歯科補綴治療においても第一選択となりつつ標準的な歯科治療にまで確立されました。
これからは日本社会が抱える超高齢化社会に向けて全身疾患を有するインプラント患者と向き合っていくことが問われる時代となりました。
今回の講義は、長期症例からデンタルインプラント治療における経過を観察し、どんな変化が起こっているのかを提示して年代別に応じた治療法についての考察でした。

〈高齢患者に対するプレシジョンインプラント補綴治療の提案〉
黒嶋伸一郎先生
長崎大学生命医科学域口腔インプラント学分野

高齢化社会をむかえてインプラント治療を希望する高齢患者は、年齢、有病者、薬剤服用者、生活様式や食生活、経済性によりその健康状態が大きく異なっています。
今後は患者の健康状態を見据えた歯科インプラント欠損補綴治療の展開が必要不可欠なので患者年齢と上部構造に焦点を当てて、患者の最後までを見据えたプレシジョンインプラント補綴治療についてのお話でした。

〈高齢者の口腔機能はどのように低下するのか?〉
菊谷武先生
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック

口腔機能は咬合支持の存在だけではなく、口腔の運動機能にも大きな影響を受け、特に舌の運動機能の低下は口腔全体の機能低下に直結します。
さらに、加齢と伴に脳血管疾患の後遺症や神経変性疾患などによっても口腔機能は障害され、歯の喪失による咀嚼障害を有する患者数は増加しています。
フレイルという状態から要介護状態において、自立度の低下の原因となる身体機能の低下や認知機能低下は、口腔機能の低下の原因にもなります。
これは外来患者に通院している患者の多くは通院不可能になることが予想されます。
講演では、高齢者の口腔機能低下の原因や課程と在宅療養患者の現状についての報告でした。

〈インプラントの長期成功による天然歯の保全〉
飯島俊一先生
東京歯科大学口腔インプラント科

天然歯とインプラントの保全には天然歯と同等以上のインプラントの長期安定が必要となります。
インプラント合併症で最も多いのはインプラント周囲炎ですが、インプラント周囲炎を引き起こすメカニカルトラブルは、インプラントの構造と強度に起因します。
インプラント周囲炎を防ぐためには、ラフサーフェイスはこつで覆われる必要があり、そのために、より細いインプラントが必要になります。
しかし、インプラントの強度も確保されなければなりませんが、そのためにはインプラント体の構造はシンプルなデザインが求められます。
そしてインプラントによる天然歯の保存を目指すと、インプラントと骨との結合力の能力を高める必要があります。
また、インプラント体の軟組織貫通部をより細くして丈夫にすることによってプラーク付着防止によりインプラント周囲組織の炎症を軽減して、さらに軟組織貫通部をインプラント周囲軟組織の厚みを確保して軟組織の経年的退縮を防ぐことにより審美性の長期の維持が達成できます。
以上のことによりインプラントとしての長期臨床応用を可能にし、口腔内の残存天然歯の長期安定を行うための考察でした。

〈インプラント治療に必要な天然歯を救う技術〉
二階堂雅彦先生
東京医科歯科大学歯周病学分野

歯周病患者と健全歯肉患者のインプラント治療には差が出ることが知られています。
歯周病患者にインプラントを埋入する際には、当然のことながら残存歯の歯周治療から始まります。
歯周炎の既往をもつ患者ではインプラントの成功率と生存率が下がることは知られており、インプラント周囲炎発症のリスクファクターとして天然歯の残存ポケットとの相関関係があることもわかっております。
歯周病に罹患した歯列へのインプラント治療には、歯周病に対する十分な理解と治療技術そして、定期的なメインテナンスが重要となります。

〈天然歯とインプラントの共存 -歯周病学的側面から-〉
松井徳雄先生
銀座ペリオインプラントセンター院長

歯周病患者のインプラント治療を行う際、欠損部位に対してインプラントの適応症か否かの診断とインプラント周囲の歯槽骨や歯肉の状態形態、清掃性、上部構造、かみ合わせ、そしてメインテナンスなどに至るまでの治療計画が必要です。
インプラント体周囲に歯槽骨が存在することが理想的で、インプラント体周囲の骨造成において様々な術式が報告されています。
また、清掃性や審美性の観点からインプラント周囲に適切な厚みを持つ角化歯肉の存在も重要です。
残存歯においては、セルフケアが行える清掃性の高い口腔内環境と安定した咬合の確立も重要となります。
重度の歯周病患者のインプラント治療およびメインテナンスにおける清掃性の高い口腔内環境を保つためには、歯周ポケットの除去はもちろんのこと生理的な骨形態の獲得と付着歯肉の獲得によりプラークコントロールしやすい環境の確立が必要です。
また歯周病により歯牙が移動してしまった際には、清掃清雅の悪化や不適切な咬合が見られた場合は適切なポジションへの矯正も必要となることもあります。
講演は、天然歯とインプラントが共存するための歯周病学的配慮について、インプラント部位と残存歯についての考察でした。

〈インプラントと審美における論争と革新〉
日高豊彦先生
東京医科歯科大学非常勤講師

審美歯科領域におけるインプラント治療の長期予後を獲得するためには、インプラント埋入の基本原則に従うこと、インプラント周囲に骨または歯肉、またはその両方の移植を行うことが良いと考えられております。
自家軟組織移植は高い予知性をもちますが、インプラント周囲への硬組織移植は形態保持の永続性を考えると非吸収性材料が良いと考えられます。

〈審美性を長期間維持するために必要なインプラント周囲組織マネージメント〉
石川知弘先生
石川歯科院長
前歯部の多数歯欠損の症例においては、多くの骨と軟組織の欠損が伴うため、インプラント治療による審美性と長期安定性を獲得することは非常に困難となります。
まず術前の審査と治療計画そして患者との十分な相談を元に実現可能な治療目標について共通の認識を持つことが非常に重要となります。
特に前歯部多数歯欠損におけるボーンアンカードブリッジの補綴の場合、目標なる歯頚線を再現するためには硬組織と軟組織のマネージメントは不可欠となります。
歯周組織の付着機構が有する固有歯槽骨を維持する能力をインプラント治療に応用することは審美性の獲得と維持に有効です。
硬軟組織が不足する場合は、その形態を把握してインプラント体を骨内に納め、軟組織をサポートするための骨形態が必要です。
またGBR法による骨造成が行われる場合は再生量や使用する遮断膜の種類、骨補填材料の種類と自家骨との混合比などによって、長期的な予後が異なることがあります。
軟組織のマネージメントとして、不十分な骨造成の量と形態を補うことに加えてじょうぶこうぞうのエマージェンスエリアで軟組織の量が不足している場合は、結合組織移植による軟組織の増大が必要となります。
術後の吸収を長期的に安定した結果を得るには、質の高い結合組織を良好な条件の移植床に固定することが重要です。
講演は、長期にわたる審美的に成功させる必要なインプラント周囲組織のマネージメントについての症例と考察でした。

〈審美領域におけるデジタルテクノロジー〉
千葉豊和先生
岩手医科大学補綴 インプラント学講座

前歯部の審美領域での良好な結果を得るためには、術前の顔貌や口唇の審査、欠損歯槽の硬組織および軟組織の診査・診断から始まり、水平・垂直・傾きの3次元的に適切なインプラントポジションはもちろんのこと、インプラント周囲の硬組織及び軟組織の再構築を含めたボリュームの外科的考慮、上部構造の作製までに至る技工操作の流れ、審美的な形態と歯肉との調和のとれた上部構造の形態と咬合様式が考えられます。
特に審美領域におけるインプラント治療で十分なインプラント周囲組織の長期安定性を獲得する他もの重要事項となるのが、適正な3次元的インプラント埋入ポジションであり、現在ではデジタル機器のめざましい発展に伴い、3次元的な診察と診査からインプラント埋入ポジションの決定と診断で確定したインプラントポジションを術中に具現化させるためのサージカルガイドの作製さらに上部構造の作製においてもデジタルテクノロジーによって行うことが可能となりました。
それにより術者のみならず、患者サイドにおいても術中の軽減につながっております。
講演は、歯科審美領域への外科的、補綴的アプローチにおける注意事項と臨床応用され始めているデジタルワークフローについての講演でした。